「なんか最近、SQLが重い気がするけど…まあいいか」
そんな風にスルーしていたあの頃の私に、そっと言ってやりたい。
「AIなら、そのクエリ最適化してくれるぞ」と。
この記事では、SQLのパフォーマンスを改善する基本テクニックに加えて、ChatGPTやCopilotといった生成AIを活用した“AI時代のクエリチューニング”について解説していきます。
効率化したいエンジニアさんはもちろん、「SQL苦手かも…」という方にもきっとヒントになるはずです!
SQL最適化の重要性とは?
「動くことは動くんだけど…なんか遅い」 SQLを書いていて、そんなモヤっと感に出会ったことはありませんか?
私はあります。そして、そのまま放置して痛い目に遭ったこともあります…
SQLのパフォーマンス最適化(クエリチューニング)は、データベースに触れる開発者・アナリスト・エンジニアにとって避けては通れないテーマです。
ちょっとしたSQLの書き方次第で、処理速度が10倍以上変わることもあります。
なぜ最適化が重要なのか?
SQLはシンプルな構文に見えて、裏ではデータベースエンジンが大量の計算・検索・結合処理を行っているため、クエリの書き方によっては無駄なアクセスが爆増してしまいます。
例えば…
- フルテーブルスキャンのせいで、毎回10万行にアクセス
- インデックスが効いていないWHERE句
- 不要なJOINやGROUP BYが乱立
これらが積み重なると、アプリ全体のレスポンスが遅くなり、ユーザー体験やシステムコストにも大きな影響を与えます。
「とりあえず動く」から「ちゃんと速い」へ
私も昔は「とりあえず結果が出ればOK」と思っていました。
でも実際に上司から「この処理遅くない?なんとかならないかな?」と言われて焦り、そこからSQL最適化に本気で向き合うようになりました。
最適化されたSQLは、
- 実行速度が速くなる
- システムリソースの節約につながる
- メンテナンス性や可読性も向上する
と、現場の悩みを根本から解決する力を持っています。
生成AIを味方につければ、怖くない
とはいえ「SQLの最適化って、勘と経験の世界では?」と思ってしまう気持ちもわかります。
でもいまや、ChatGPTやCopilotのような生成AIが、クエリの解析や改善提案を手伝ってくれる時代です。
AIが提示した改善案をきっかけに、自分のコードを見直すことで、手間も学びも同時に手に入る感覚になります。
本記事のねらい
この連載では、以下のポイントを中心に解説していきます。
- SQL最適化の基本的な考え方とテクニック
- 生成AIを使ったチューニングの実践例
- AI時代における「賢く働くエンジニア」のための視点
「なんとなくSQLを書いていたけど、そろそろちゃんと理解したい」
「生成AIで仕事をもっとスマートにしたい」
そんな方にとって、“AIを味方にするSQL最適化”の第一歩になれば嬉しいです。
SQL最適化の基本テクニック
「SQL最適化ってAIに任せられるんでしょ?」と思ってしまいそうですが、ベースとなる知識があるからこそ、AIの提案の良し悪しを判断できるんです。
ここでは、生成AIを活用する前提として押さえておきたい、「SQLパフォーマンス改善の基本」を整理しておきます。
インデックスの使い方ひとつで、速度は劇的に変わる
SQLの高速化と聞いて最初に思い浮かぶのが、やはりインデックスの最適化です。
私は以前、あるバッチ処理が異常に遅くて調べたら、WHERE句に指定していた列にインデックスが張られていなかったという初歩的なミスをしていたことがあります…。
ポイント
- フィルタ条件やJOINに使われる列には適切にインデックスを設定
- LIKE ‘%〇〇’ のように先頭がワイルドカードだとインデックスが効かない
- 複合インデックスは列の順序にも注意が必要
実務Tip: PostgreSQLなら EXPLAIN ANALYZE を使って実行計画を確認すると、どのインデックスが使われているかが視覚的に分かります。
WHERE句は絞り込みの順番と書き方が命
WHERE句で複数条件を書くとき、実行順序や条件の絞り込み効率によって処理速度に差が出ることがあります。
AIに「WHERE条件の効率的な順序を考えて」と指示するのもアリですが、基本を理解しておくとやり取りの精度が上がります。
ポイント
- 選択度(=対象件数が少なくなる条件)を先に書くと効果的
- 明確な比較演算子(=, >, <)の方が効率的
- 不要な OR 条件は避け、できれば UNION やCASE式に分離
JOINは種類と順序でパフォーマンスが激変する
私は一度「LEFT JOIN を INNER JOIN に変えただけで処理時間が半分以下になった」ことがあります。
JOINの種類や順序を見直すだけでも劇的な改善が期待できるのです。
チェックポイント
- 本当に必要なJOINか?(サブクエリやWITH句で代用可能なケースも)
- 結合条件にインデックスは効いているか?
- 結合元のテーブルのレコード件数は?
JOINの種類別ざっくり比較
JOINタイプ | 特徴 | 最適化視点 |
---|---|---|
INNER JOIN | 条件が一致する行のみ返す | 最も軽量なJOIN |
LEFT JOIN | 左テーブルにすべての行+一致行 | 不要ならINNERに切り替え検討 |
RIGHT JOIN | 左右逆のLEFT JOIN | 実務では使用頻度少なめ |
FULL JOIN | 両方の全レコード | 重くなりやすく注意が必要 |
GROUP BY / ORDER BY の罠に注意
集計や並び替えも、処理の重さに大きく関わってきます。
特に、大量データ×GROUP BY×ORDER BYの組み合わせは要注意。
パフォーマンスのために気をつけること
- 不要な集計・ソートを削除(UI側で補えるなら任せる)
- ソート対象の列にインデックスを張る
- LIMIT句を併用してページネーションを考慮する
知識があるからこそ、AIを“味方”にできる
これらの基本テクニックを把握しておけば、生成AIに「このクエリを最適化して」と頼んだとき、 その出力の“良し悪し”や“意図”を正しく読み取れるようになります。
クエリ最適化において、AIは非常に有能な補助役です。
でも最終的に「採用するかどうか」を判断するのは私たち人間。
次章ではいよいよ、生成AIを実践投入して「どんな風にクエリを高速化してくれるのか?」を見ていきましょう!
AIによるSQLチューニングの実践
「SQLのどこが悪いのか分からないけど、とにかく遅い」。
そんなときに頼りになるのが、生成AIによるチューニング支援です。
最近は、ChatGPTやCopilotを使えば「このクエリ、もう少し速くならない?」といった“ふわっとした質問”にもそれなりの改善案を出してくれる時代。
ただし、AIを効果的に使うには、人間の判断と組み合わせる“対話型アプローチ”が欠かせません。
ChatGPTにクエリを診断してもらったら
例えば、以下のようなSQLをChatGPTに送ってみると
SELECT * FROM orders
WHERE customer_id IN (
SELECT customer_id FROM customers
WHERE registered_date < '2020-01-01'
)
ORDER BY order_date DESC;
このときのプロンプト例
「このSQLの実行速度を改善するにはどうすれば良いですか?PostgreSQL想定です。」
するとChatGPTは…
- サブクエリをJOINに変える提案
- インデックスの確認(customers.registered_date など)
- SELECT *を特定の列に制限する案
など、実践的なチューニング候補を提示してくれました。
さらに「実行計画をEXPLAINで確認しましょう」とアドバイスまで。
ポイントは、ただコードを出力させるだけでなく、“なぜその改善が有効なのか”もセットで確認すること。
このやりとりがあることで、自分自身のSQL思考も強化されていきます。
Copilotでリファクタリングをリアルタイムに
VS Codeなどの環境でGitHub Copilotを使えば、SQLを書きながらその場で改善提案を補完してくれるのも魅力。
例えばこんな状況
SELECT COUNT(*) FROM access_logs WHERE status = '200' AND response_time > 1000;
このクエリを書いている最中に、「ログ件数が多くて遅そうだな」と思ったらコメントで
-- TODO: response_timeにインデックスは効く?
と書くだけで、Copilotが「インデックスがないとパフォーマンスが低下する可能性があります」と補足説明付きで提案してくれることも。
Copilotの強みは以下です。
- IDE上でクエリ補完→即時改善提案
- 既存SQLを一括で読みやすく整形
- コメントから意図を推測して最適化方針を提示
AIとのやりとりは「正解」じゃなく「選択肢」
AIが返してくれる改善案は、あくまで“ひとつの道”。
私が実践で気をつけているのは、「提案をそのまま採用しない」ことです。
たとえば、「インデックスを貼りましょう」と言われたとしても、 それが実際に有効かどうかは、EXPLAINで確認+実データ量と照らして判断しています。
言い換えれば、「AIが道を照らし、人間が進む方向を選ぶ」というイメージ。
この“協業スタイル”が、生成AI時代におけるSQLチューニングの新しい形です。
実務でのAI活用フロー(例)
- 遅いクエリをAIにそのまま貼り付けて相談
- 改善提案をもらい、読み解く(目的・理由を理解)
- EXPLAINなどで自分でも確認・検証
- 必要に応じて、改善案+実務要件に合った微調整
- 最終的なクエリを本番に反映して効果を測定
このような流れで、AIとの対話を1ステップに組み込むだけで、SQLの品質とスピードが両立できるようになります。
まとめ:「人間の判断 × AIの提案」が最強
生成AIをSQLチューニングに使うことは、もう特別なことではありません。
でも、「AIの言うとおりにすればいい」ではなく、「提案を理解し、選び取る力」が求められるのがポイント。
私たちエンジニアの役割は、単なるコードの記述者ではなく、“意味のある最適化”を実現するパートナーとしてAIと向き合うことなんだと思います。
次章では、このようなAIとの対話をさらにスムーズにするための、プロンプト作成のコツや活用パターンを紹介していきます!
生成AIを使いこなすプロンプト&コツ
SQLの最適化をAIに頼むのは簡単です。
でも、その一言がうまく伝わらずに「それじゃない感…」な返答が返ってきた経験、ありませんか? 私はあります。
この章では、AIに伝わるプロンプトのコツと、SQL最適化を“AIと共同作業”にするための工夫を紹介します!
プロンプトは「聞き方」が9割
AIは人間ではないので、「空気を読んで補ってくれる」ことは苦手です。
だからこそ、目的・条件・前提をきちんと伝えることが大切なんです。
ダメな例(ふんわりすぎ)
「このSQL遅いので速くして」
これでも反応はしますが、「見当違いな提案」や「よくあるテンプレだけ返される」可能性が高いです。
良い例(要件が明確)
「このPostgreSQLクエリのパフォーマンス改善案をください。テーブル ‘orders’ は100万行以上で、インデックスは ‘customer_id’ のみに設定済みです。」
AIにとっては、「制約・目的・背景」が多いほど“的確な案内役”になってくれるんです。
おすすめプロンプト例(実践向け)
例えば…
このSQLの実行時間が長い理由と、改善のための具体的な書き換え案を教えてください。
・使用DB:PostgreSQL
・データ件数:ordersが500万行、customersが10万行
・WHERE条件に使っている列にインデックスは未設定です
・ORDER BYも遅い気がしています
このように書くと、「どの部分がボトルネックか」+「具体的な最適化方針」+「改善後のSQL例」まで返ってくるケースが多いです。
回答の良し悪しは「1回で決めない」
「イマイチな返答だったから、使えない」と判断してしまうのはもったいない!
生成AIは、“会話を通じて精度を高めていくツール”です。
やりとり例:
- 「このクエリを改善して」
- 「INDEXがないと書いてありますが、customer_idにはあります」
- 「JOINの順番を変えたらどうなる?」
こうやって追加で情報を伝えると、「提案の質が一段レベルアップ」します。
“お願いの仕方”も工夫できると強い
AIとのプロンプト設計では、「何をしてほしいか」+「どうしてそうしたいのか」をセットで伝えると、提案の納得度が高まります。
やりたいこと | プロンプト例 |
---|---|
インデックス活用を検討したい | このクエリで効果的にインデックスを使うには、どの列を対象にすべきですか? |
サブクエリをJOINに変換したい | このSQLのサブクエリ部分をINNER JOINに書き換えると、パフォーマンスは改善しますか? |
実行計画の評価をしてほしい | このEXPLAIN ANALYZEの結果から、どの処理にボトルネックがあるか教えてください。 |
書き方が重いか確認したい | このWHERE句の書き方は、PostgreSQLで効率的ですか?もっと良い書き方があれば提案してください。 |
自分用の「プロンプトテンプレ」を持っておくと便利
いくつか定番の聞き方をストックしておくと、毎回ゼロから書かなくて済むようになります。
例)
- SQL構文の改善
- インデックス案の相談
- 実行計画の解釈
- スロークエリへのアプローチ
生成AIとのやりとりも“資産”として積み上げていくイメージですね!
まとめ:「プロンプト設計=AIとの翻訳スキル」
AIは優秀な相棒ですが、“こちらの意図を正しく伝える翻訳力”があってこそ、その真価を発揮します。
だからこそ、プロンプト設計のちょっとした工夫が、SQL改善の質とスピードに直結するんです。
次章では、こうしたAI活用が今後どう進化していくか?
SQLとAIの未来を見据えて、エンジニアとしてどんなスキルが必要になるのか? 少し広い視点で展望していきましょう!
AI×SQL最適化の未来展望
SQLの最適化をAIに相談することが、もはや「裏技」ではなく「日常の一手」になりつつある現在。
この先、生成AIとSQLはどう進化し、エンジニアのスキルや役割はどう変わっていくのでしょうか?
未来を先取りしながら、ここでは“AI時代におけるSQLとの向き合い方”を考えてみます。
自動チューニングは当たり前に。人は“意図”と“判断”の役に
数年後、DBツールやIDEに「このSQL、最適化しといたよ」と通知してくるAIアシスタントがいるのは、もはや不思議ではありません。
実際、OracleやPostgreSQLにも自動実行計画最適化やインデックスチューニングの仕組みがすでに備わっており、それをAIがより賢く制御する時代が来ています。
ただし、どんなに優秀なAIでも“すべてを鵜呑みにして任せてしまう”のはリスクです。
大事なのは、「この処理は本当に必要か?」「このクエリの背景にある業務目的は何か?」を判断する力。
つまり、人間はコード職人から、意図をデザインする設計者に進化する必要があるということです。
「SQLを書ける」から「AIを通じて設計できる」へ
かつては「SQLを手で書ける人」が重宝されました。
しかしこれからは、「AIとやり取りしながら、最適なデータ抽出の要件を伝えられる人」に価値が移るのではないかと感じています。
具体的には、
- プロンプトでデータ構造や目的を的確に説明できる力
- 提案されたクエリの意図や影響を読み解くスキル
- チューニング結果を業務側に説明できるコミュニケーション力
…など、技術+対話+設計思考のハイブリッドなスキルが重要になります。
“全部AIでいい”と言われないために。自分の武器を持とう
「AIが勝手に最適化してくれるなら、自分はいらないのでは…?」 そう感じる瞬間もあるかもしれません。
私もちょっと思ったことがあります(笑)
でも、その問いに対する答えはシンプルで、“人にしかできない価値を見せる”ことだと思っています。
例えば…
- ビジネス要件を理解し、SQL設計に落とし込む力
- スロークエリの真因を特定し、再発を防ぐ仕組みを提案できる力
- AIの提案を、読みやすく・再利用しやすい形にリファクタリングできる力
そうした力は、単なる「AI活用」ではなく、「AI時代におけるプロフェッショナル」になる道です。
まとめ:AIが“道具”から“チームメイト”になる未来へ
SQLとAIの関係は今後ますます近づき、やがて当たり前のように「相談しながら書く」時代が訪れます。
そこで求められるのは、AIの提案を上手に引き出し、正しく活用し、自分の判断で磨き上げるスキルです。
誰よりも効率よく、誰よりも賢く、“データと向き合う力”を磨くことが、 AIと共存する時代のエンジニアとしての最大の価値になるのではないでしょうか。
AIと協働するSQLチューニングの新常識
SQLの最適化は、単なる技術テクニックにとどまりません。
いまや生成AIと協働することで、「速くて美しいクエリ」をスマートに仕上げる時代が来ています。
本記事では、パフォーマンス改善の基本から、ChatGPTやCopilotを活用したAI時代のチューニング手法までを紹介してきました。
大切なのは、AIを“答えを出す道具”と見るのではなく、“提案をくれるパートナー”として活かす姿勢です。
人間の判断力とAIの支援力が合わさったとき、SQLの可能性はもっと広がっていきます。
次に最適化に悩んだら、そっとAIに相談してみてください。
きっと、次の一手が見えてくるはずです。

SQLの最適化、私もずっと「正解があるようで、ない世界だなあ…」と感じていました。 でも、生成AIと一緒にクエリと向き合うようになってから、ちょっとずつ不安が楽しさに変わってきた気がします。
この記事がみなさんが少しでも楽に、そして少しでも楽しくSQLと付き合えるきっかけになればうれしいです。 悩んだときは、AIにもこの記事にも、いつでも頼ってください!
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